ジェネリクス

ここでは、変数型をパラメータとして指定する、ジェネリクスについて扱います。

- 目次 -

変数型そのものを引数にする

関数や構造体の用途によっては、引数やメンバ変数の型が異なるだけで、 それ以外は全く同じ関数や構造体が必要になる場合があります。 このような場合、必要な型すべてに対して、同じような関数や構造体を用意するのは面倒です。 また、未知の型の構造体を、広く一般的に扱いたい場合もあります。

こういった場合に役立つのが、ジェネリクスです。ジェネリクスは、関数の引数と同じような感じで、 型そのものを引数に指定する機能です。

ジェネリクスを用いた関数

ジェネリクスを用いた関数は、以下のような仕様で定義します。

- ジェネリクスを用いた関数定義 -

戻り値の変数型 関数名<型引数1,型引数2,…>( 引数1, 引数2, … ) {
    処理内容 ;
    return 戻り値 ;
}

上で通常の関数と異なるのは、 <型引数1,型引数2,…> の部分です。ここに型の名前を格納する引数を宣言します。 名前は実在の型名では無く、自由に付けます。いわば仮の型です。そこに、呼び出し時に実際の型が入力されます。

実際に、加算を行う関数を、ジェネリクスを用いて記述してみましょう:

GenericFunctionInt.vcssl

このプログラムを実行すると、VCSSL コンソールに「 3 」と表示されます。

上の例で、add 関数で用いている「 Type 」型というのは、VCSSL に標準では存在しない型です。 しかし関数内で、Type value = a + b ; のように、Type 型の変数を宣言しています。 さらに、関数の引数も戻り値もType 型となっています。これでエラーにならないのは不思議に思えるかもしれません。 これが成立する理由は、Type が型引数であって、仮の型だからです。

この関数を呼び出す時に、add<int>(1, 2) としています。この <int> という所で、 型引数 Type に int を指定しています。これにより、add 関数の中で、Type 型が int 型と見なされて実行されます。

つまり、上のadd 関数が実際に実行される際には、以下の関数と等価なものとなっています:

IntFunction.vcssl

今度はfloat 型として呼び出してみましょう:

GenericFunctionFloat.vcssl

この例ではVCSSL コンソールに「 3.3 」と表示されます。型引数に float を指定したため、 Type 型が float 型と見なされて実行されたためです。

このようにして、ジェネリクスを用いると、同じ関数を、複数の型に対して使用する事ができるようになります。

ジェネリクスを用いた構造体

ジェネリクスは、構造体でも使用する事ができます。それは以下のような仕様で定義します。

- ジェネリクスを用いた構造体定義 -

struct 構造体の名前<型引数1,型引数2,…> {
    メンバ変数a の宣言 ;
    メンバ変数b の宣言 ;
    …
}

このように、構造体名の後ろに型引数を付けます。例えば、型が未定のメンバ変数を持つ構造体は、 以下のように定義して使用します:

GenericStruct.vcssl

上のプログラムを実行すると、VCSSL コンソールに「 幅=1.2 高さ=2.4 」と表示されます。

上の例の構造体「 Box 」は、型が未知のメンバ変数「 width 」と「 height 」を持ちます。 それを変数宣言時に Box b ; というように、型パラメータに float 型を指定した段階で、 Type 型が float 型と見なされて用意されたわけです。

上の例で、b の宣言を Box b ; に変更して実行すると、メンバ変数が int 型となるため、 結果はVCSSL コンソールに「 幅=1 高さ=2 」と表示されます。